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ホリデーシーズンに向けて:トラベル・ポリシー(旅行に関する規定)

hnaito9

今年も残り2ヶ月となりました。年末年始の従業員の帰省や旅行に備えて、新型コロナウイルス対策の一環としての会社の「旅行に関する規定」を見直し、従業員に会社のポリシーを周知させていく必要があります。


まず雇用主が従業員の旅行を禁止することについては、幾つかの州法において、雇用主が従業員の「勤務時間外の活動(off-duty conduct)」を不当に制限・妨害する行為を禁止しています。従業員の個人旅行は、州法や裁判所によっては、勤務時間外の活動に該当すると判断されることになります。他方、OSHA(米国労働安全衛生局)の規制によって、雇用主は職場の安全性を確保する義務を負います。

職場の同僚が海外旅行をすることに、神経質になる従業員も少なくないと思います。だからこそ、雇用主は従業員の年末年始の旅行を認めつつ、感染予防の体制をしっかり整えておかなければなりません。そのようなバランスの良い旅行規定を策定する上で、知っておきたいポイントをまとめます。

1.従業員が州外或いは海外に渡航する場合は、雇用主に報告することを義務付ける

会社が安全にビジネス活動を継続していく上で、「事前報告義務」が重要であることを従業員に理解してもらいます。当該報告義務は、差別や例外なく、「全従業員」を対象としなければなりません。

2.コロナ禍でする旅行の注意事項を従業員に教育する

たとえば、車での旅行よりも船のクルーズ旅行は人の密集度が高い為、ハイリスクな旅行となります。また、旅行する州や国によっても感染リスクは異なります。従業員(特に重症化リスクのある従業員)には、どのような旅行がハイリスクであるかを理解させておくことが重要です。旅行における注意事項は、CDC(米国疾病予防管理センター)のトラベル・ガイドラインを参考にしましょう。

3.州法による自主隔離規定を確認する

旅行の後の自主隔離規定については、州法によってガイドラインが異なるので注意してください。たとえば、ニューヨーク州やニュージャージー州では、感染者数の多い国への旅行については、14日間(2週間)の自主隔離が義務付けられています。検査によって陰性であったとしても、この自主隔離期間を短くすることはできないといった厳しい規定となっています。また感染者数の多い国や州のリストは、毎週更新されているのでこちらも確認をする必要があります。

イリノイ州では自主隔離を強制するルールはないものの、シカゴ市はニューヨーク州に類似する厳しい自主隔離規定が存在するなど、州と市によって規定が変わる場合もあるので注意しましょう。

4.FFCRA(家族第一・コロナウイルス対策法)などの従業員の権利を確認する

雇用主は、自主隔離となった従業員がFFCRA(家族第一・新型コロナウイルス対応法)や州法による有給傷病休暇の利用ができるか否かを理解しておく必要があります。州法によって旅行後の自主隔離が義務付けられている場合は、従業員は、FFCRAの有給傷病休暇の補償を受けることができます。他方、自主隔離義務のない州の従業員については、これらの補償の利用ができない可能性があります。州法の自主隔離義務がないので代わりに雇用主が従業員に自主隔離を強制する。結果、その期間に従業員が給与を受けられない(例:リモートワークが利用できない)ことについては、法的に問題とされる可能性があるので注意して下さい。

5.旅行後の従業員の体調をスクリーニングする

上記の4番に記載したように、雇用主が従業員を強制的に自主隔離させることに法的リスクが存在する場合、雇用主は(i) 体温や体調を毎日スクリーニングする質問票を従業員に交付し、(ii) 感染の症状がある場合は迅速に報告するよう義務付けることになります。雇用主は、EEOC(雇用機会均等委員会)による規定に従って、旅行から戻った従業員にPCR検査を求めることも可能です。他方、ウイルスには潜伏期間があることから、検査の結果が陰性であっても油断ができない為、従業員には感染の症状がある・なしをモニタリングすることを呼びかけていくことになります。

6.会社の旅行規定に従わない場合の対応について明確にする

旅行規定は、会社の安全な職場環境の確保に必要なポリシーとなります。たとえば、事前に旅行プランの報告をしなかったり、体調スクリーニングを提出しないなど、会社のポリシーに従わない従業員については、厳重な処罰の対象となる旨を理解させておくことが重要です。ホリーデーシーズンになる前に、再度旅行規定を従業員に確認させ、「知らなかった」と言うことがないように、予防感染をすることの重要性を教育しましょう。

NLRA(全国労働関係法)の規定から、雇用主は、従業員の業務外活動を監視するような行為は避けなければなりません。FacebookなどのSNSから従業員が嘘をついて旅行していること等を調べることもできますが、このような監視はNLRAにおける違反行為となる可能性もあるので注意しましょう。


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