コロナ禍において、従業員が仕事を断る権利、或いは職場復帰することを拒否できる権利について:
従業員がオフィスに戻ることを拒否する理由として、もっとも多いのが、新型コロナウイルスへの感染に関する一般的な「恐怖心」や「不安」です。従業員の新型コロナウイルス感染に対する不安は理解できるものの、そのリスクに対する恐怖心だけで、与えられている仕事を従業員が拒否することはできるのでしょうか?
ポッドキャスト:
分析事項:新型コロナウイルスに感染するという一般的な恐怖心・不安(ポッドキャスト放送では、これを「レベル1のシナリオ」と定義しています)を理由に、従業員は雇用主に与えられた仕事を拒否できるか?
ここで、雇用主が注目しなければならないのが、OSHA(労働安全衛生法)です。実は、このOSHAには、働くことで命の危険や大きな怪我となるような「差し迫ったリスク」がある場合、従業員は仕事をすることを拒否する権利があると規定されています。しかし、「感染するリスクがゼロではない」という恐怖心や不安は、命にかかわるような危機迫った危険性とは言えません。よって、OSHAのガイドラインはもちろん、CDCや州法の規定に従って事業再開をし、雇用主が従業員の安全確保に努めている場合は、従業員がOSHAに定められる権利を主張し、仕事を拒否することは難しいといえます。
他方、OSHAにある「差し迫ったリスク」を従業員が証明するのが難しいからといって、従業員の要求や主張を雇用主が無視していい、ということにはならないのが、コロナ禍の難しいところです。多くの従業員は、OSHAに「仕事の拒否権」が規定されていることは知らないと思います。むしろ、従業員が「雇用主は従業員の安全確保のために、できるだけ便宜を図るべき」と思うのは、ポスト・コロナ社会にニューノーマルを求め、新しい仕事のやり方を雇用主が積極的に取り入れるべきだ、という考え方からきています。この従業員の思いを無視し、コミュニケーションをしないことは、従業員に会社の環境を一方的に押し付けてしまうことになります。そうなると、会社は優秀な人材を失ってしまったり、従業員の不安・不満を高める要素をつくってしまうことになります。そのため、法的リスクが低いシナリオにおいても、雇用主の慎重な判断が求められることになります。従業員が仕事を断る正当な理由はない状況でも、雇用主は便宜が図れるかを検討し、できること・できないことをしっかり従業員とコミュニケーションすることが大切になってきます。
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