今回は、米国の失業保険制度についてまとめていきます。
失業保険の要件や申請方法などは、基本的には州法によって定められています。ポスト・コロナでは、2020年3月27日に施行したCARES ACT(コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法)によって、失業保険制度が暫定的(今のところ、2020年12月31日まで)に、より手厚い補償内容へと変えられています。CARES ACTという連邦政府による特別補助金によって、各州の失業保険制度が大きく変わったポイントは5つあります。
① 申請の便利さ
電話やネットでの手続きが可能である等、申請の手続きが簡単になっている。連邦政府による補助金によって、各州の失業保険局のインフラが強化されている為、タイムラグなく補償を受けられる体制となっている。また、厳格な審査もなく、再就職のための努力を継続的に証明していなくても、一時帰休や解雇となった従業員は失業保険の補償が受けられるかたちとなっている。
② 上乗せの補償金
解雇や一時帰休となった従業員が受けられる週の補償金額が上乗せされている。
③ 連邦政府の補助金
連邦政府の補助として、一時帰休や解雇された従業員には、週$600の給付金が上乗せされている。この給付金については、7月末に終了となる。
④ 補償期間の延長
連邦政府の支援として、2020年12月31日までに受けられる失業保険の補償期間が13週間延長されている。一般的には、州から受けられる失業保険の補償期間は26週間です(州によっては、26週間以下のものもあるので、ローカルルールを確認しましょう)。この州の補償期間に追加して、連邦政府による補償の13週間がプラスされているため、最大で39週間の補償が受けられる。
⑤ PUA(パンデミック失業支援)の実施
PUAによって、州の失業保険の申請が拒絶された場合、或いは通常失業保険の対象とはならない人たち(個人事業主、独立契約者、ギグワーカー)も補償が受けられる制度となっています。
現在、事業再開をされた雇用主の方も多いと思います。実際再開はしたが、経済的な負荷が大きくそれを軽減するために再度、従業員をレイオフや一時帰休としなければならない状況もあるかもしれません。現時点では、8月からは、週$600の給付金がなくなることから、失業する従業員を違うかたちでサポートしようと考える雇用主の方も少なくありません。たとえば、レイオフではなくシフト時間を減らし、従業員の減った給与については、部分的な失業保険の申請やワークシェアプログラムに頼るという作戦もあります。または、解雇対象者に対しては、給与の何か月分といったSeverance(退職金)を支払ってあげることもあります。Severanceを受けると、州によっては、従業員が受ける失業保険の補償が減らされる可能性があります。そこで、住宅手当てや食事手当てのための災害ファンドを失業対象者のために設定する会社もあります。従業員の失業保険の補償を減らさないようなサポートを設置しつつ、レイオフや解雇にともなう訴訟リスクを減らす対策を考えることも重要なポイントとなります。
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