『もっと知りたい
アメリカの銃規制と
セカンドアメンドメント』

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アメリカ合衆国憲法の中でもっとも議論され・問題視される合衆国憲法修正第2条(セカンドアメンドメント)、「武器を保有・携帯する権利」と、銃規制の問題。

特に、アメリカの論争を2つに分けている「銃の保有・携帯は個人の権利ではないので、その権利を規制することは憲法違反とはならない」と言う「the collective rights theory(集団的権利)」という考えと、セカンドアメンドメントは市民が自己防衛のために武装する権利を保障するものであるという「the individual rights theory(個人の権利)」について、解説しています。

『もっと知りたい
アメリカの銃規制と
セカンドアメンドメント』

 

US LEGAL AID FOR LEADERS、どうもアメリカ弁護士の内藤です。よろしくお願いします。
今日の動画は、アメリカ合衆国憲法の中でもっとも議論され・問題視される合衆国憲法修正第2条(セカンドアメンドメント)、「武器を保有・携帯する権利」と、銃規制の問題について語っていきたいと思います。

 

銃の所有率は州によって大きく異なりますが、アメリカで流通している銃器は100人当たり約121丁といわれ、世界でもずば抜けて高くなっています。また、アメリカは銃による犯罪と死亡者がもっとも多い国となっています。

アメリカでは、これだけ銃による犯罪と被害があるのに、なぜ銃をもっと規制しないのでしょうか?

 

実は、アメリカには、「しっかり銃規制をしていくべき」と言う考えがある一方、セカンドアメンドメント(武装する権利)と言う権利があり、「人々の自己防衛手段を制限する法律はつくってはならない」と言う考えが存在します。この異なる考えがぶつかり合い、アメリカを2つに分け、残念ながら銃乱射事件などをなくす解決策にまで至っていない現実があるのです。
 
銃が生活の日常にない私たち日本人にとっては、アメリカ合衆国憲法の人権保障を規定する「権利章典(Bill of Rights)」の中で、セカンドアメンドメントが含まれているのが不思議なことかもしれません。「人が生活していく上で、本当に銃って必要?」「アメリカ人じゃないから分からないや」とこの問題をスルーしてしまいそうになります。

 

しかし、アメリカでビジネスをするリーダーの皆さん、そしてそのご家族が、安心・安全にくらす上で、セカンドアメンドメントについては知っておいていただきたく、今日の動画を作ることにしました。セカンドアメンドメントの問題を通して、皆さんと一緒に、アメリカという国をもっと理解していければと思います。
 

アメリカの人権保障を規定する権利章典には、全部で10の権利が定められていて、そのうちの2つ目の権利として書かれているのがセカンドアメンドメント「武器を保有・携帯する権利」です。

 

セカンドアメンドメントは、この様に書かれています。
A well-regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.
 

1791年、セカンドアメンドメントが成立した当時、アメリカには「国が人々の自由・権利を奪うときは武力を持って行うに違いない。なので、国には兵を持たせるべきではない」と言う強い警戒心が広まっていました。この考えから、当時のアメリカを守っていたのは職業軍人ではなく、Militia(義勇兵・民兵)と呼ばれる有事に軍人として武器をとり戦う一般人であり、このMilitiaは州政府の管轄となっていました。
 
しかし、英国との独立戦、アメリカ合衆国憲法を作り「強い中央政府の確立」を目指す「連邦派(Federalist)」と呼ばれる人達は、アメリカは「国として軍隊を持つべきだ」と主張します。独立戦争の経験から、確かにMilitiaだけでは世界の脅威から国を守れないと言う共通認識はあったものの、強い中央政府の確立に不安を抱いていた「反連邦派(Anti-federalist)」と呼ばれる人達にとっては、国が軍隊を持つと言う連邦派の主張をなかなか受け入れることができません。

 

そんな時に、連邦派の中心人物であったJames Madisonがある提案をします。その提案こそがこのセカンドアメンドメントです。強い政府は作るけど、「人々が武器を保有・携帯しMilitiaとして州を守ることを認めてあげるよ」。そして、「この権利があれば、国が法的にあなた達を武装解除できないから安心でしょ?」と言うわけです。要するに、セカンドアメンドメントは、連邦派が強い中央政府をつくる上で、ある意味、反連邦派の不安を取り除くための妥協案としてできた権利であったと、言える背景がありました。
 
他方、セカンドアメンドメントが実施されたのは「1791年」です。その頃から、アメリカ人の考え方や、アメリカの情勢も大きく変化しています。今、アメリカと言う国が「市民の自由・権利を奪うかもしれない」、と不安に思っている人は少ないでしょう。同時に、「武器を持つ権利が認められていると言っても、その武器でアメリカの軍事力に対抗できる」と信じているアメリカ市民もいないと思います。

 

こうした時代の変化から、セカンドアメンドメントは古い考えで、「銃などで武装する権利より、人の命を守ることが大事。銃規制を積極的にしていくべきだ」と言う世論が、暗殺事件などが起きた1960年代のアメリカでは次第に強くなってきます。

その一方で、このセカンドアメンドメントをある意味軽視し、銃規制を強化すべきだという情勢に強く異を唱える私的団体、NRA:全米ライフル協会(National Rifle Association)が登場します。NRAは、1871年に設立されたスポーツ射撃や銃愛好家のための小さい団体でしたが、1960年以降、「セカンドアメンドメントは市民の絶対的権利であり、その権利を規制することは憲法違反である」と言う立場をとり、積極的なロビー活動や訴訟運動を行います。その結果、NRAは現在会員数500万人ともいわれ、アメリカでもっとも強力な私的団体へと成長していきます。
 
ここに、「銃規制は積極的にすべき」と言う考えと、「武器保有・携帯の権利となるセカンドアメンドメントは絶対だ」と言う2つの主義主張がぶつかり合うことになります。
 

では、銃規制賛成派と反対派の考え方の違いや、それぞれがどの様にセカンドアメンドメントを解釈しているかを見ていきましょう。
 
もう一度セカンドアメンドメントの内容を見てみましょう。
A well-regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.
(日本語訳)
規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であり、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない」
 
この一文の中で、「to the security of a free State」の前後に書かれている内容に注目してみてください。というのも、「free State」の後のコンマを境として、賛成派と反対派の解釈が変わってくるからです。
 
銃規制賛成派は、セカンドアメンドメントを「1つの文章」として捉えます。「A well-regulated Militia(規律ある民兵)」と言う一文から始まっていることから、セカンドアメンドメントはMilitia(民兵)が武装する権利を保障するものであり、「市民の武装権を認めるものではない」と解釈します。つまり「銃の保有・携帯は個人の権利ではないので、その権利を規制することは憲法違反とはならない」と言う考えです。この銃規制賛成派の考えのことを、英語で「the collective rights theory(集団的権利)」と言います。
 
対して、銃規制反対派は、セカンドアメンドメントを「to the security of a free State」の前段と後段の部分を分けて読むべきだと主張します。この考えを「the individual rights theory(個人の権利)」といって、武器の保有・携帯の権利は、Militiaに限定するものではない。「the rights of the people to keep and bear Arms」という一文は、明確に一般市民が自己防衛のために武装する権利を保障するものであって、この権利は絶対的であることから、表現の自由や宗教の自由といった基本的人権同様に、一切侵害されるべきではないという考えです。
 
銃規制賛成派、反対派それぞれのセカンドアメンドメントの解釈を見てきましたが、皆さんはどちらが正しい解釈だと思われますか?

セカンドアメンドメントは、たった一文の短い法律です。その短い文章の解釈をめぐってここまで賛成派と反対派がぶつかり合っていることに驚かれた人もいるかもしれません。
10個の権利が書かれている権利章典で、解釈がここまで議論されているのは、セカンドアメンドメント(武器保有の権利)だけ、となっています。
 

最後に、連邦最高裁判所のセカンドアメンドメントの解釈を見ていきましょう。その中でも、 District of Columbia v. Heller(2008)とMcDonald v. Chicago (2010)という2つの重要なケースについては、是非覚えておいてください。

どちらのケースでも、市民の拳銃所持の規制がセカンドアメンドメントの権利侵害にあたるかが問われ、最高裁判事が5対4に分かれて拮抗した判決が下されました。つまり、連邦最高裁判所という場所でも、賛成派と反対派の解釈がぶつかり合ったことになります。

 

では、この2つのケース、どちらの解釈が勝ったのでしょうか?

 

まず、2008年のヘラー事件では、自宅で銃器を保管する場合は、銃から弾丸を抜く、または分解したり引き金にロックをかけるなど、銃の機能をなくした状態にしなければならないと言ったとても厳しい規制となっていました。この様なワシントンDCの規制に対して、連邦最高裁判所は、セカンドアメンドメントは「個人の権利」であり、拳銃の保有を禁止する、ましてや銃の機能をなくすような規制は、人々の自己防衛の権利を侵害するので、これは「憲法違反」だという判断をします。

 

そうです、連邦最高裁判所は、NRAなどが主張する「the individual rights theory(個人の権利)」が、セカンドアメンドメントの解釈としては正しいと、このケースで決めたわけです。

ヘラー事件の2年後に起きたマクドナルドのケースでも同様に、「the individual rights theory(個人の権利)」の解釈が正しいとされ、シカゴ市による拳銃規制は、個人の自己防衛する権利を侵害するとします。

 

もともとセカンドアメンドメントは、国の脅威や圧力に対する州や市民の抵抗力として、実施された背景があります。しかしこのマクドナルドの事件では、連邦だけではなく、州や市などの規制についても、セカンドアメンドメントの権利を侵害するものではあってはならない、と判断されることになりました。

 

動画の冒頭に「なぜアメリカでは銃規制をするのが難しいのか?」というお話をしましたが、ヘラーとマクドナルド事件における連邦最高裁判所のセカンドアメンドメントの解釈が、「アメリカにおける銃規制の難しさ大きく影響しているのです。

他方、連邦最高裁判所は、全ての銃規制がセカンドアメンドメントの違反であるとはしていません。たとえば、重罪を犯した者や精神障害を抱える者の銃の保有・携帯の禁止、学校や政府関連機関への銃の持ち込み禁止といった規制は、賛成派・反対派共に妥協できる範囲となっています。

 

その一方、銃乱射事件の再発防止にある程度効果のありそうな規制、たとえば殺傷能力や弾倉の容量が高い銃の禁止や、銃購入の際の身元調査を厳しくするといった規制については、NRAなど銃規制反対派から大きな反発を受けます。特にヘラーやマクドナルド事件の後は、個人の自己防衛の権利を犯すと考えられる規制の実施がとても難しくなっているのです。

終わりに

 

いかがだったでしょうか?本日は、セカンドアメンドメントと銃規制についてお話をしてきました。
アメリカで銃乱射事件が起きると、NRAなどは「Guns do not kill people. People kill people」と言い、悪い(悪い人間が悪事のために銃を使う)銃、に対抗するのは良い(人間)銃(善良な市民の武装)だけだと主張します。日本人である私たちには、この主張はなかなか理解できないものかもしれません。しかし、銃乱射事件があるとその地区では、銃の保有率が上がるといわれていて、アメリカの銃の問題は本当に根深いなと感じてしまいます。

 

銃規制は日本人には対岸の火事的な問題であっても、アメリカでビジネスをするに皆さんには、是非、セカンドアメンドメントの様なアメリカならではの問題や葛藤に関心を持ってもらいたく、引き続き、皆さんがアメリカをより身近に感じるコンテンツを作っていきたいと思います。

 

今日の動画が皆さんの予備知識となれば幸いです。

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では、今日はこの辺で。ご視聴ありがとうございました。