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『知っておきたい
アメリカ独立宣言』

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アメリカで最も有名な文書のひとつであり、アメリカ人でなくてもハートに刺さってしまう文書、アメリカの独立宣言「Declaration of Independence」について語っています。

 

独立宣言とは何か。なぜ、独立宣言は書かれたのか。時代の背景、そして、その当時の人々の希望や葛藤とはどのようなものか。独立宣言の中で、私たちが知っておくべきポイントを3つあげ、なぜ時を経てもアメリカ独立宣言の言葉が人々の心を打つのかを、お話しています。

『知っておきたい
アメリカ独立宣言』

 

どうもアメリカ弁護士の内藤です。よろしくお願いします。

 

今日の動画では、アメリカで重要であり、最も有名な文書のひとつでもある、独立宣言「Declaration of Independence」について語っていきたいと思います

 

独立宣言とは?

独立宣言は、英国の統治下にあった13の植民地が完全な独立を目指し、ひとつの国アメリカとしてやっていくぞ!と言う決断を人民、そして諸外国に宣言した文書です。

この独立宣言、植民地の代表が出席する大陸会議(第2回)という場所で、1776年7月4日に全会一致で採択されます。これが、アメリカで毎年盛大にお祝いされる「Independence Day(独立記念日)」のはじまりです。

 

独立宣言には、自由を求めるという目的の他に、もうひとつ重要なことが書かれています。それは、独立後の「アメリカのかたち」についてです。独立後、アメリカはどこを目指して進んでいくのか。この国のFoundation基盤は何であるかが、独立宣言では謳われているのです。

 

独立宣言はどうして書かれたの?

不意打ちのように突然革命を起こすわけでもなく、または英国王ジョージ3世宛に抗議文を送るわけでもなく、アメリカの独立宣言は、アメリカ全住民、そしてイギリスと敵対するフランスやスペインなどの諸外国に宛てて、布告がなされています。

 

独立宣言がこのような形で書かれたのには、2つの理由がありました。ひとつは、英国から独立をするという決断と、自由のための戦いをすることを正当化するため。もうひとつは、アメリカ人に独立のために決起するよう、そして諸外国には同盟国として戦いに協力するよう呼びかけるためでした。

 

独立宣言は、ジョン・アダムズ、ベンジャミン・フランクリン、トマス・ジェファーソン、ロバート・R・リビングストン、ロジャー・シャーマンの5人によって起草され、その中でもっとも文章を書くのがうまかったと言われるトマス・ジェファーソンがドラフトの執筆をします。

独立宣言の文章を読むと、そこには、建国の父たちの迷いが読み取れます。英国から独立するという選択が本当に正しいのかという葛藤、そして独立のための戦争をすることに対する不安があります。

 

しかし、英国王の度重なる不正と権利侵害がある中、もう話し合いのレベルでは解決しないところまで来ていて、残念ながら独立の戦いをする以外の選択は残されていない。というように、アメリカがその決断に至ったことの正当性や根拠が、独立宣言には切実に書かれています。

 

そして、独立宣言の最後には、We mutually pledge to each other our Lives, our Fortunes and our Sacred Honor(我々は、相互に、我々の生命、運命(財産)、及び神聖な名誉を捧げ合うことを誓う)という一文が書かれています。とてもかっこいい文章ですね。色々不安はあるけれども、英国から独立をし、新しいアメリカを作っていくのだ。その為にはすべてを賭けるという建国の父たちの強い意志。この強い意志をひとつにし、しっかり世界に示していく為にも独立宣言を発表することはアメリカにとって重要なことだったのかもしれません。

 

独立宣言の中で知っておくべきポイントとは?

独立宣言は、細かく見ていくと、導入、前文、本文パート1、本文ポート2、結論という5つのパートに分けることができます。

 

導入: 独立の呼びかけを記した導入部:この文章が書かれた目的や英国からする理由について記す

前文: 追求すべき基本原理の提示、政府のあり方

本文パート1: 暴君ジョージ3世の悪政に対する27の不満のリスト

本文パート2: 独立の必要性と、その正当性の説明

結論: 独立の宣言

この5つの構成の中で、もっとも有名で、「これぞアメリカのDeclaration of Independenceだ」という内容が書かれているのが、前文の部分です。独立宣言を執筆したジェファーソンにとっても、前文はもっとも熱が入ったパートなのか、とても力強くそして美しい文章が展開されています。

独立宣言の前文のポイントは3つあります。この3つのポイント、実際の英文を見ながら解説していきたいと思います。

1つ目のポイント。

All men are created equal, that they are endowed by their Creator with certain unalienable Rights, that among these are Life, Liberty and the pursuit of Happiness.

1つ目のポイントは、独立宣言の中でももっとも有名な文章ですね。全ての人間は、生まれながらにして平等であり、不可譲の権利を創造主から与えられています。この「不可譲の権利」という部分、発音が難しいですが、unalienable Rights(ちなみに、現代英語はunalienableではなくinalienableという)とは、侵すべからざる権利のことです。

 

この不可譲の権利は何かというと、生命、自由、幸福の追求です。神様GODではなく創造主Creatorといっているところに、神や宗教に頼っていない潔さがあり、にくいところでもあるのですが、重要なのはこの生命、自由、幸福の追求という権利は、政府、ましてや王様などの人から与えられたものではないということです。よって、何人ともこの権利を奪うことはできません。すべての人間は、生まれながらに侵されることのない平等な基本的人権を持っている、というこの考えを、「自然権思想」といいますが、この思想こそが1つ目のポイントです。

 

2つ目のキーワードはこちら。

To secure these rights, Governments are instituted among Men, deriving their just powers from the consent of the governed.

 

1つ目でお話しした「生命、自由、幸福の追求」という基本的人権を守る為だけに、政府は存在するのだという考えが、ここでは書かれています。そして、その政府の権限はどこから来るかというと、人々または人々の信託によって与えられています。これを「社会契約的思想」と言いますが、その象徴となる表現が、from the consent of the governedです。Consentは同意という意味ですが、他の言葉で言い換えるとContractやAgreement(契約)です。人はお互いに契約をして、基本的人権を守る為に政府を作るのだ、というのが2つ目のポイントになります。

3つ目です。

Whenever any Form of Government becomes destructive of these ends, it is the Right of the people to alter or to abolish it, and to institute new Government.

もし人々が作った政府が、権利を乱用し恣意的な統治をするようになってしまった場合。そしてその政府が生命、自由、幸福の追求という基本的人権を侵害するのであれば、人々は、その政府を変え、または廃止し、新たな政府を樹立することができる。そう言った権利があることが、ここでは書かれています。要するに、政府が不当に権力を行使した場合、人々には抵抗権が与えられている、というのが最後のポイントとなります。

今お話しした、自然権、社会契約的思想、抵抗権という3つのコンセプトは、英国の哲学者ジョン・ロックに大きな影響を受けています。そして、この3つの思想は独立宣言の重要な理念となり、後に制定される合衆国憲法の基本となっていきます。

まとめ

いかがだったでしょうか?経営者の皆さんにも、一度独立宣言を英語で、是非読んでもらいたいと考えています。

独立宣言の中で、個人的に私が好きなのは、3つ目の「抵抗権」のところです。アメリカに長年住んでいて、この3つ目の文章を読むと、不当に権力を行使する政府に人々は抵抗するRights(権利)が与えられているというところのRightsが、権利というよりも、むしろこれは人民のResponsibilities(責任)なのだという解釈にだんだんと変わっていきます。

現代の政府、そして私たちは、独立宣言に書かれた美しい思想に即して生きているのであろうか?建国の父の意志をちゃんと受け継いでいるのであろうかと、アメリカ人でない私でさえ感じてしまうのです。

 

独立宣言は、たとえば合衆国憲法とは違って法的な拘束力は何もありません。しかし、独立宣言は、今でもアメリカ人のハートをしっかりつかんでいます。平等や公平を求めるSocial Movement(社会運動)などが起きる際、独立宣言の言葉が引用されたりするのも、アメリカ人のハートには刺さる言葉だからだと思います。

人々を原点に立ち返らせてくれる独立宣言。そういう共通の文書を持っているアメリカ人を少し羨ましいな、と感じます。

本日の動画が少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。

関連動画もぜひ、ご覧ください。(数秒おく)リーガルセンス、法源、訴訟大国、

では、今日はこの辺で。ご視聴ありがとうございました。

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