第3回 
【7分で解説】リーダーの決断と
法律の関係性

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リーガルセンスシリーズの3回目、アメリカにおける「リーダーの決断と法律の関係性」についてのお話。新しいビジネスが生じ、それを取り巻く新しい法律が生まれる。どこまでビジネスに自由を認め、その産業を強くするか。自由にしすぎると公平性を失うことになるので、健全な市場を保つためには、どこまでの法律が必要か?  Foreign Corrupt Practices Act 海外腐敗行為防止法を例に解説をしています。

リーガルセンスシリーズ
第3回:リーダーの決断と
法律の関係性

どうも、アメリカ弁護士の内藤です。よろしくお願いします。

リーガルセンスシリーズの3回目、本日は、アメリカにおける「リーダーの決断と法律の関係性」について、お話したいと思います。

 

リーガルセンスシリーズの第2回の中で、会社をとりまく法律が「Rules of the Game」であることを企業のリーダー知っておく必要がある、と言うお話しをしました。    

 

会社がビジネスをしていく上で、法律は、会社がやってはいけないことを定めた「ルールブック」みたいなもの。そして、これらのルールは、社会における健全な競争を確保するため、或いは、unethical(非倫理的)な行為を予防するために存在します。

法律がビジネスをしていく上でのルールである以上、リーダーは、会社のビジネスに関わる法律に対してアンテナを張っておく必要があります。

これまでリーガルセンスシリーズの中で解説してきた「リスク・リワード分析」をし、それによってインフォームドディシジョン、つまり会社にとって最善の選択肢を探すことが、リーダーには求められています。

 

このInformed Decisionをリーダーが意識しなければならない理由、または意識してほしいと私が思っている理由は、将来的に起きる法的トラブルを回避するためだけではありません。

会社が守るべき法律というのは、どのように定められているのか。そういった全体観を持つことを、リーダーの皆さんには意識していただきたいのです。    

会社のRules of the Gameは、実はリーダーの判断や決断に大きく影響されます。

リーダーが利益を追求するがあまり、不公正で非倫理的な決断をしてしまうと、社会におけるルールを大きく変えてしまうことがあります。そして、それが自分の会社にもマイナスを及ぼすことになります。

 

法律は、時代の流れ、ニーズによって常に進化していくものです。テクノロジーの発展やビジネスモデルの進化に、法律は「後追い」をするかたちとなっています。そういった新しい環境の中で、何がフェアなのかを考えながら、会社が守るべき法律は作られることになります。

ただそのような法律が作られる中で、リーダーの決断、特に誤った決断に対しては、法律にとても大きな影響を及ぼすことがあります。

 

たとえば、1977年、Foreign Corrupt Practices Act 海外腐敗行為防止法という法律がアメリカで制定されました。この法律は、ウォーターゲート事件など企業の資金が違法な政治献金に利用される問題が契機となりました。

 

当時の企業のリーダーたちは、ビジネス機会を得る目的で裏金づくりという問題を起こしてしまいます。そして、こうした不正支出を黙認し、不正会計を行う企業が多く発生しました。

そのような企業の不祥事またはunethical(非倫理的)な行為を撲滅しなければならない、ということで、作られたのがこのFCPAという法律でした。

 

1977年に制定されたこの古い法律であるFCPAが、2000年代になり、また注目されることになります。日本企業の中でもホットなトピックとなっています。近年のグローバル化により、外国でより有利なビジネスを行い、競争相手を出し抜くために、外国公務員に賄賂を贈る企業が増えてしまいました。こうした行為はフェアではないということで、またFCPA法律が活気付くことになるわけです。

 

このように、企業が利益を追求する中で、不公正や非倫理的(unethical)なやり方が多くなると、このような行為を止めるために、FCPAのような法律が生まれる。また、あまり活用されていなかった古い法律が、健全な競争の確保のために、改めて強化させる必要性が出て、その法律が     企業を取り締まる、という現象に繋がってくることになります。

 

企業の不祥事や不正行為は、内部統制の意識の低さから生まれますが、会社の内部統制に対する意識は、リーダーのリーガルセンスある・なしに大きく影響を受けるものだと私は思っています。

 

リーダーの決断と法律の関係性は、決してstatic(静的)なものではありません。リーダーである皆さんには、リスク・リワード分析を通して皆さんが下す決断が、会社を取り巻く法的環境に大きく影響を与えることになる、そういった意識していただきたいです。    

リーダーの誤った決断が、法律の形を定め、それが企業が競争をする環境を変えてしまう。そのような競争のフレーム、競争環境の変化によっては、皆さんの会社がもつリソースや競争力を制限するものとなってしまうことがあります。

 

新しいビジネスが生じ、それを取り巻く新しい法律が生まれる。どこまでビジネスに自由を認め、その産業を強くするか。また、自由にしすぎると公平性を失うことになるので、健全な市場を保つためには、どこまでの法律が必要となるのか。  

この法律とビジネスのバランスに関する議論はとても重要となるのですが、その議論の最先端は、まさに、このアメリカです。このアメリカでビジネスをしている皆さんには、ぜひこうした議論には関心をもっていただき、この最先端の場所で、リーガルセンスをproactive(積極的・前向き) に捉えて、リーダー力を磨いていただければと思います。