マクドナルドの事例に学ぶ「ブランド資産」の継続性とポートフォリオ戦略
- All ok Project

- 5月13日
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■ 30年積み上げた資産が「空白」になる
2026年4月14日、米国特許商標庁(USPTO)は、マクドナルドによる「Extra Value Meal」の商標登録申請(以下、EVM商標という)に対し拒絶の判断を下しました。
マクドナルドは1991年からこの商標を使用、1994年に登録しましたが、2019年にEVMを一旦メニューから外し、廃止から数年後の更新期限(2023〜2024年)に更新しませんでした。その結果、長年維持してきた独占的な権利を空白としてしまったのです。
■ 鍵を握る「セカンダリー・ミーニング」とは?
商標の世界には、「識別力」という概念があります。 「Extra(追加の)」「Value(価値ある)」「Meal(食事)」という単語は、本来ただの「お得なセット」という説明に過ぎず、誰か一人が独占できる言葉ではありません。
しかし、長年使い続けることで、消費者が「あ、これはマクドナルドのことだ」と認識するようになります。これをセカンダリー・ミーニング(二次的意味=獲得された識別性)と呼びます。
マクドナルド側は当然、「EVMと聞けば、みんなマックのことだと分かっているはずだ」と主張しましたが、今回、当局はその主張を検討することすら拒否し、EVM商標はDescriptive(本質的に識別力を有さない記述的マーク)であると判断します。
■ なぜ拒絶された?「ブランド戦略」の痛恨のミス
今回の拒絶は、法律論以前の「手続き上の初歩的なミス」が原因です。
「使用の証明」を怠った: 再出願時、マクドナルドは「将来使う予定(Intent-to-Use)」を出願基礎として申請しました。その後、実際にメニューを復活させたのに、申請内容を「既に(実際の使用)使用中」に更新するのを忘れていたのです。
当局の判断: 「まだ使ってもいないのに、みんなに知られている(識別力がある)なんて主張は受け付けられない。」これが当局の出した、あまりにもシンプルで厳しい答えでした。
■ レストラン・フランチャイズ経営における「商標」の真の価値
「セットメニューの名前なんて、何でもいいじゃないか」と思うかもしれません。しかし、特に米国でフランチャイズ展開を考える際、商標は以下の2点で決定的なパワーを持ちます。
ロイヤリティの根拠: 加盟店が本部に支払うお金は、「確立されたブランド力」を使う権利への対価です。「Extra Value Meal」含め、マクドナルドの商標ポートフォリオによって生まれるブランド力や競争力こそが大きな経済的価値となります。
模倣品への防波堤: ライバル店が「マックのようなセット」を売るのを防ぐ唯一の武器が商標です。また、商標こそが、他社と差別を図る力となるわけです。
■ 「今は使わない」が「手放す」であってはならない理由
経営判断として、商標ポートフォリオの適正化(スリム化)は必要です。しかし、中長期的な視点が欠けると、ブランドの競争力を削ぐことになりかねません。
マクドナルドにとって「Extra Value Meal」は、単なるメニュー名を超えた以下の価値を持つ資産でした。
強力な参入障壁: ライバルが「お得なセット」を謳う際に、最も魅力的なこのフレーズを使わせない力。
将来の復活価値: インフレが進む現代において、「バリュー(価値・お得感)」を象徴する言葉は、いつか必ず再登板の機会がある戦略的カード。
■ もう一つのミス?!資産を眠らせない工夫:戦略的な「継続使用」
例えば、年に一度のイベントとして「復刻ウィーク」を開催したり、特定の地域やオンライン限定で名称を残したりしていれば、商標法上の「使用」を継続し、30年来の登録を維持し続けることができたのです。
わずかな運用コストを惜しんだ結果、今、彼らは多額のコストを投じて「ゼロからの再登録」という険しいプロセスを歩んでいます。
■ 結論:ブランド資産は「育てる」だけでなく「守り抜く」もの
おそらく最終的には、マクドナルドは手続きを修正し、圧倒的な認知度を証拠として提示することで、セカンダリー・ミーニングが認められ、EVM商標の再登録に漕ぎ着けるでしょう。
しかし、一度手放した権利を再構築するために費やされる時間とコスト、そしてその間のブランドの不安定さは、経営にとって小さくないダメージです。
特に海外展開やフランチャイズ化を視野に入れる場合、商標は「競争力を高めるパワー」そのものです。 「この商標は、10年後、20年後も他社に使わせたくない資産か?」 中長期的なブランドポートフォリオの視点を持つことの重要性を、今回の事例は物語っています。
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