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商標権101:
他の知的財産権(特許、著作権など)とは何が違うの?
I. 商標権の重要性
商標権の所有者(企業)は、特定の地域や国において、自社の商品やサービスに付しその帰属性を示す商標(例:文字名称、ロゴ、スローガンなど)を排他的に使用することが認められている。その上で、商標権には、以下の2つの目的を果たす役割を担っている。
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消費者保護:市場における混乱(例:誤って商品を購入する)を防ぎ、一定の品質の商品やサービスを保つ。
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財産保護:第三者によるフリーライドを回避し競争力を維持することで、企業のブランドへの投資を守り、(ブランドによる)利益を権利者である企業のみが享受できるものとする。
強い商標(ブランド)が企業にもたらす利益としては以下が挙げられる。
1)消費者のロイヤルティ
2)営業上の信用(グッドウィル)
3)ブランド認知によるマーケティング効率の向上
II.商標権の3つの基本的機能
1. 単一の出所の識別機能
商標権は、特定の商品やサービスがどこから提供されているかを示すものであり、その出所を識別する役割を担う。
2.他者との区別機能
商標権は、自社の商品やサービスを他者のものと区別する手段となり、品質や信用に基づいたブランディングが可能となる。
3.混同の防止機能
商標権は、自社のマーク(商標)に対し、同一・類似商標を第三者が使用することを禁止し、消費者が市場において混同することを防止する。
III.商標権の法的枠組み
アメリカ合衆国において商標権は、以下の3つの法体系によって保護されている。
1. コモンローによる保護
コモンローとは、過去の裁判例を通じて形成される判例法の体系である。コモンローの商標権は「使用主義」の原則に基づき、最初に商業的に使用した者に対して権利が発生する。コモンロー上の商標権は、実際にその商標が使用されている地理的範囲に限定して効力を有する。
2. 連邦法による保護
連邦レベルにおける商標権の保護は、「ランハム法(The Lanham Act)」によって定められている。この法律は、米国特許商標庁(USPTO)が管轄する。USPTOにて(連邦)登録を受けた商標権は、アメリカ全土での排他的権利が付与される。一般に「商標登録」といえば、この連邦登録を指す場合が多い。
3.州法による保護
アメリカ各州には独自の商標登録制度が存在しており、州法に基づいて登録された商標権は、当該州内における限定的な効力が認められる。従って、事業展開が特定の州に限定される場合には、州登録による商標権の取得も実務上検討されることがある。
IV. 国際的な観点
商標権は領域的・地属的な性質を持つため、一般に、ある法域での権利は、他国には及ばないことが基本となる。他方、アメリカは、以下を含むいくつかの国際条約に加盟しており、アメリカ外で商標権の保護を求める企業や、アメリカ内で商標権の保護を求める外国企業に、様々な利点を提供している。
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パリ条約(産業財産権の保護に関する条約)
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マドリッド・プロトコル(国際登録制度)
V. 連邦法による商標権保護を受けるための要件(連邦商標登録)
連邦レベルにおいて商標として保護を受けるためには、以下2つの要件を満たしている必要がある。
1)商標が識別力(Distinctiveness)を有していること。
2)商標が州際商取引において使用されていること。
1. 識別力(Distinctiveness)
識別力とは、商標が持つ単一の出所を識別する能力のことである。商標の識別力には以下の2種類がある。
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本質的識別力(Inherent Distinctiveness):商標自体が、商品やサービスの出所を即座に識別・差別化するものとなっている。
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後発的識別力(Acquired Distinctiveness)またはセカンダリー・ミーニング:商標自体はそもそも識別力を持たないが、時間をかけた継続使用やマーケティング活動により識別力を獲得する。
2. 商取引上の使用(Use in Commerce)
アメリカにおいて、連邦レベルでの商標権保護は、その商標が州際商取引において使用(例:商標を付した商品の販売・取引)されることが求められる。
3.連邦商標登録の利点
アメリカにおける商標権の取得および保護に連邦商標登録は必須ではないが、「主要登録簿(Principal Register)」に商標を登録することにより、商標権者は以下のような重要な利益を享受できる。
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商標の所有権に関する推定証拠力
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商標の有効性に関する推定証拠力
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登録された商品またはサービスに関連して、商標を全国的に独占的に使用する権利
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登録商標記号「®」の使用権