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アメリカでビジネス進出をするなら、どの州がいい?

ご存じのようにアメリカには50州ありますが、どの州でビジネスをするのが最も最適か、ということを考えたことがあるでしょうか?


日本企業がアメリカ進出をする際に、会社を設立する州として、伝統的に最も人気があるのは、デラウェア州です。


しかし、デラウェア州でビジネスをする企業はあまりなく、実質的に本拠地を構える州として人気があるのは、ニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州、ジョージア州、オハイオ州、そして最近ではテキサス州、フロリダ州などが人気がです。



つまり、デラウェア州で「会社設立」をするとしたら、本拠地を構える州では「州外法人登録」をするという、2つの手続きを行うことになります。


会社を設立する州としてデラウェア州が最も人気があるのは、税制面のメリットもあるかもしれません。しかし、法律的に言うと、デラウェア州が人気な理由は以下にあります。


  1. 法律における高い予測可能性と安定性:豊富な判例法

  2. 優れた司法制度:高い専門性と公平性のある裁判官の存在に定評あり。Delaware Court of Chancery (衡平法裁判所)の存在

  3. 会社設立または更新手続きにおいて速やかで効率的なシステム


デラウェア州は「会社寄り」であったり、株主のために有利な州というわけではなく、むしろ企業がビジネスをしていく上で柔軟なシステムを持っていることや、紛争解決をする際に法律の予測性が高いことが、安定的にデラウェア州が「進出州」に選ばれる理由となっています。


しかし、会社の設立州ではなく、本拠地を構える州はどうなのか?

法律の面からみて、企業にとってビジネスがやりやすい・やりにくい州はあるのだろうか?

これについては、あまり知られていないようです。


日本企業が本拠地を構える州を選ぶ際は、法律以外の側面(税制面、人材確保、インフラ、日本企業ネットワーク、日本商工会やジェトロなどの公的機関の存在など)が重要視されているようです。


本拠地を構える州、または実際にビジネスを行う州に関連する法律面で留意すべき情報については、以下の私のYoutube動画を参考にしてみてくだい。


「アメリカの裁判制度」

「Subject Matter Jurisdiction:裁判における事物管轄権」

「Personal Jurisdiction:裁判における人的管轄権」

「第二次的法源 リステイトメントとは?」

コモン・ローの原則「Stare Decisis」とは? 



ビジネスの本拠地屋や営業場所を選ぶ際の参考として、U.S. Chamber of Commerce, Institute for Legal ReformというNPP法人が出しているデータがあります。



2019年のデータですが、弁護士によって各州の裁判所のシステム・法律制度のランキングがされています。


例えば、裁判制度においては、どういった項目が考慮されるかというと、裁判官や陪審員、損害賠償の算出におけるfairnessやresonablenessなどの評価です。


この統計データによると、ランキングは以下のようになります。

  1. デラウェア

  2. メイン州

  3. コネチカット州

  4. ワイオミング州

  5. アラスカ州


デラウェア州が10カテゴリーのうち8項目でトップで、ダントツの1位です。

しかし、2位-5位の州は、日本企業にとってはあまりなじみのない州です。


日本人に人気のハワイ州は15位、マサチューセッツ州は28位、オハイオ州は35位、ニューヨーク州は36位、テキサス州は38位、ジョージア州は41位、カリフォルニア州は48位。そしてランキングの最後が、日本企業にけっこう人気のあるイリノイ州なのです。


このランキングに関して、皆さんどう思いますか?


これは裁判制度に関するランキングであるため、各法律を個別に見ていくと、このランキングは変わるのかもしれません。


たとえば「労働法」で見ると、従業員の保護が手厚い州として知られているのが、オレゴン州、カリフォルニア州、ワシントン州、ニューヨーク州などです。


これらの州は、「従業員寄り」なので、逆に雇用主にとっては厳しい州と言えるかもしれません。従業員にとってランキングが低いというのは、雇用主にとってやりやすい州ともとらえられます。そういった州には、テキサス州やジョージア州などがあげられます。


ちなみに、会社設立・更新手続きのシステムの面から見ると、私の経験上、最もやっかいで不便だなと思う州は、ダントツでニュージャージー州です。

カリフォルニア州、イリノイ州なども、デラウェア州に比べ、手続きが複雑でやりにくいです。


いかがでしょうか。

法律的に見て、ビジネスをしやすいアメリカの州がどこかについて、まとめてみました。

少しでも参考になればと思います。



内藤博久(Moses Singer弁護士、ニューヨーク州・テキサス州)

US Legal Aid for Leaders発起人



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