Youtubeチャンネル:久ラジの『アメリカ法律力』シリーズ第5回でお話した、Subject Matter Jurisdiction(事物管轄権)の補足です。
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少しテクニカルなお話しになりますが、Subject Matter Jurisdiction(事物管轄権)の条件となるFederal Question(連邦問題の管轄権)とDiversity Jurisdiction(州籍相違管轄権)という2つの条件のどちらかをクリアできない場合においても、連邦裁判所で事件を審理してもらう方法があります。
それが、Supplemental Jurisdiction(付加管轄権)という方法です。
例えば、賃貸借契約をめぐって、同じ州に法定住所を持つテナントと家主間で訴訟に発展したとします。まず法定住所となる州が同じであり、Complete Diversity(完全な州籍相違)がないことから、Diversity Jurisdictionの条件はクリアできないことになります。
また賃貸借契約の問題は、州法を基礎とするものなので、Federal Questionの条件もクリアできないことになります。
ただ、ここでテナントが、「賃貸借契約をする際に、家主に不当な差別を受けた」というもう一つ別の訴訟を開始したいと考えたとします。アメリカには、公正住宅取引法(Fair Housing Act)という法律があって、住宅購入や賃貸取引において、人種・宗教・性別・出身国・身体障害・家族構成に対する一切の差別を禁止しています。このFair Housing Actという法律は連邦法なので、この不当差別の問題については、テナントはFederal Questionの条件を基礎に連邦裁判所での提訴を目指すことが可能です。
上記のテナントと家主の例のように、当事者の間には2つの訴訟があって、ひとつは連邦裁判所にSMJが認めらる訴訟。もうひとつは州の裁判所でしか審理できない訴訟であった場合、後者のケースが、連邦問題である前者のケースに付随または関連しているのであれば、本来は州の裁判所で取り扱うべき賃貸借契約の問題についても連邦裁判所が担当してしまうことがあるのです。これがSupplemental Jurisdictionです。
Supplemental Jurisdicitonは、Ancillary Jurisdictionと呼ばれることもあり、その言葉から理解できるように、「従属的な、付随する」という意味となります。裁判所の裁量で、連邦問題にある程度関連性がある事件であれば、州の問題も併せて審理することを決めることができるというものです。Federal QuestionやDiversity Jurisdcitionのように、一定の条件をクリアすることで連邦裁判所に必ずSMJが認められる、という絶対的な権利とは異なるものとなります。
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