米国におけるコンプライアンス体制のあり方:米国司法省が改訂した「企業コンプライアンスプログラム評価指針(2024年)」をチェックする
- hnaito9
- 7月25日
- 読了時間: 4分

2024年9月23日、米国司法省(DOJ)は、2017年に出された「企業コンプライアンスプログラムの評価指針(ECCP:Evaluation of Corporate Complainace Program)」を改訂しました。
このECCPですが、どのようなものか、何のためにあるかご存知でしょうか?
ECCPは、DOJのCriminal Divisionの担当官のためのガイドラインで、連邦法に違反し犯罪を行った組織・企業を刑事訴追、捜査、処罰する際、その組織・企業のコンプラインス体制に問題はなかったかを、このガイドラインに沿って評価することになります。ECCPは、Criminal Divisionの担当官のガイドラインではあるものの、企業が自社のコンプライアンス体制がDOJの目からどう見えるかを評価するための有用な参考資料になるのと、アメリカで求められるコンプラインス体制がどのようなものか?!という最新情報を確認することができます。ですから、アメリカでビジネスを行うリーダーの皆さんは、リーガルセンスを高める意味でも、最新版のECCPを確認しておくことが重要です。
DOJ(米国司法省)は、コンプライアンス体制の在り方について、「Well-Designed(適切に設計された)」という表現を用い、その実効性を重視しています。つまり、単に制度として存在するだけでなく、形骸化していない実効性のある体制であることが求められています。この点に関して、企業が今後どのような分野に積極的に取り組むべきかについて、そのポイントが、ECCP(評価における企業のコンプライアンス・プログラム)に明記されています。たとえば、今回のリニューアルでは、人工知能(AI)などの新興技術に関わるリスクを企業がどう評価・管理しているかが新たな評価項目として追加されました。
ちなみに、私が今回のリニューアルで気になったのは、以下の2点です。
1)内部通報制度(ホイッスルブロウイング)の整備と、通報者の保護の徹底
DOJは近年、企業の自発的な内部通報制度の導入とその在り方に対してとても注力しています。DOJは特に、(i)企業がどのように不正行為を発見するのか、また不正行為をどのように抑制しているか、(ii)内部での通報をどのように奨励しているか、(iii)通報者の保護、報復行為禁止を徹底しているか、といった要素を評価の基準としています。要するに、DOJは、実効性のある内部通報制度がなければ、Well-Designedなコンプライアンス体制とは言えない、と考えているわけです。
2)過去の教訓への取り組み
私は日頃から、アメリカの法律は、結果よりもプロセス(事件の前後の過程)を重視するシステムである、と考えていますが、まさに、この改訂内容も「プロセス重視」を考えさせられるものといえます。ECCPは、自社および他社が行った過去の(法律)問題から何が悪かったのかの教訓を学び、それを企業は積極的に自社のコンプライアンス体制に反映すべきだと述べています。ここでは、自社だけではなく「他社」の問題も含めているところがポイントで、アメリカの法律の世界では「知らなかった」は理由にならず、むしろマイナスの評価となります。リーダーは、リーガルセンスのアンテナをしっかり張って、Informed Decisionのため、業界内の事例や情報から、リスク評価や体制改善を図り、必要に応じて社内研修などを行うことが求められます。
ECCPのリンクはこちら:
近年、アメリカにおいては、企業のサイズ問わず内部通報制度の整備が求められる背景があります。実効性のある内部通報制度を運営するためには、ホットラインの構築が不可欠だという考えにいたり、ERMAプログラムでもEthical Hotline(弁護士による外部通報窓口)のサービスを開始しました。
Ethical Hotlineの詳細パンフレット
この機会に、是非企業のコンプライアンス体制がどのようなものか、体制が機能しているかを再度確認してください。積極的に取り組み、適切な改善の「努力」というプロセスがあることが重要で、DOJや裁判所もその努力の姿勢を評価する(逆に実効性のない体制の放置は、企業の怠慢と判断される)、ということを認識してください。
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