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EEOC(米国雇用機会均等委員会)の2024年〜2028年における戦略的実行計画:EEOCがシステム的案件として、重点的に取り組む法律問題とは?!


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米国雇用機会均等委員会(EEOC)は、2012年以降、社会の差別問題や構造的な格差(不公平性)をなくし、Leveling the playing field (競争の場を公平にする)をするため、EEOCが重点的に取り組む法律問題を公表し、そのような問題を引き起こす、あるいは是正せず放置する企業を厳しく取り締まっています。EEOCが公表し、重点的に取り締まる法律分野が記載されているのが、EEOCの「戦略的執行計画(Strategic Enforcement Plans)」と呼ばれるものです。2023年9月21日には、2024~2028年版の最新計画がEEOCから発表されました。

今回のStrategic Enforcement Planを簡単にまとめると、注意すべきポイントは以下となります。


1)採用と雇用における障壁の撤廃

特定の業界(例:建設、製造、テック、金融、運輸など)においては、女性やマイノリティのUnderrepresentation(存在が軽視されている状況)が存在している、または多様性が歴史的に不足しているといった場合、このような構造的な格差・不公平性に対して企業はどう対応するのかが問われます。また、特定の職務・ポジションにおいて、Protected Class(保護された属性)の人々や障害を持つ人たちにとって、採用や雇用を制限するような仕組みがないかの確認も含まれます。たとえば、広告の在り方、研修のあり・なしといった雇用機会へのアクセスが公平に提供されているかが見られます。


2)脆弱な立場である労働者の保護

立場的に不利な従業員(雇用主に対してレバレッジがない)に対して、企業が不公正で違法的な扱いをしていないか。たとえば、移民労働者、障害を持つ従業員、LGBTQI、派遣労働者、高齢労働者、性的暴力の被害者、英語など言葉の障害がある従業員などが対象です。


3)新しいテクノロジーや社会・政治の変化によって引き起こされる問題や、近年差別的や不公平な扱いとして問題となっているエリア

採用・雇用のプロセスにおいてAIやアルゴリズムを利用する際、差別的取り扱いが起きていないか。反ユダヤ主義やイスラムフォビアなどの社会現象に関連した差別、妊娠・出産にともなう女性への差別、障害者や宗教への合理的便宜を図る雇用主の義務が果たされているかなどが問われます。


4)同一賃金・同一労働への取り組み

企業の中でEqual Pay Audit(均等賃金監査)を行い、不当な賃金格差が生じていないかを確認しているか。独自調査の結果、不当な賃金格差がある場合は積極的に是正を行う必要があります。また、労働環境改善(給与含む)のための労働者の共同行為を不当に制限することは禁止されています。採用・雇用時の注意点としては、応募時に給与希望を申告させることや、過去・前職の給与をもとに報酬設定を行うことなどが挙げられます。


5)オファーレター、雇用契約、ハンドブック、その他の社内ポリシーにて、不当に労働者の権利を制限することはできない

州によって解釈が異なりますが、競業避止義務、勧誘禁止義務、秘密保持義務、仲裁合意事項、クラスアクション・ウェイバー(集団訴訟の放棄)などの条項には問題がある場合があります。従業員を報復行為から保護する体制が整っているかも問われます。


6)ハラスメント防止対策

実効性のある内部通報制度や企業のレポートラインに問題はないか。研修やトレーニングが行われているかも確認されます。


以上のとおり、EEOCは今後、上記の分野に関連する通報や苦情に対して、優先的かつ積極的に対応していく傾向が強まると考えられます。要するに、EEOCの「戦略的執行計画(Strategic Enforcement Plans)」を推し進める中で、重要なケースであると判断された場合、差別行為を行う企業に対して、EEOCによる調査や集団訴訟の提起が行われることになります。


企業のリーダーの皆さんは、EEOCの「戦略的執行計画(Strategic Enforcement Plans)」を確認し、EEOCが重点的に取り締まる法律イシューが何であるかにアンテナを張っておきましょう。特に、ポリシーの変更や新しい技術を採用するなどして、大規模に従業員に影響を与える場合は十分な注意が必要です。このような場面では、たとえ差別的意思がなかったとしても、構造的な格差や不公平性が生じていると判断されると、EEOCのターゲットとされるリスクがあります。


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