たった1つの商標が夏の市場を独占した:スターバックスが「フラペチーノ®」を買った日
- All ok Project

- 2025年12月21日
- 読了時間: 3分

前回の記事では「商標戦略が市場を制する」というお話をしましたが、今回はその象徴的な事例であるスターバックスの「フラペチーノ®」について深掘りしたいと思います。
今や「フラペチーノ®」という言葉を聞けば、誰もが瞬時にスターバックスのあの冷たいドリンクを思い浮かべるはずです。しかし、実はこの名前、スターバックスがゼロから考案したものではないことをご存知でしょうか?
始まりはボストンの小さなカフェから
1992年。アメリカ・マサチューセッツ州にある「The Coffee Connection」というカフェチェーンの創業者、ジョージ・ハウェル氏が夏季限定の新しいドリンクを考案しました。それが「フラペチーノ(Frappuccino)」の誕生です。
この名称は、以下の2つの言葉を掛け合わせた造語でした。
frappé(フラッペ):フローズンドリンク
cappuccino(カプチーノ):イタリア発祥のコーヒー
ハウェル氏はこのユニークな名前に高い価値を感じ、すぐさま以下のように商標登録(Trademark Registration)を行いました。これが後に、飲料業界の歴史を塗り替えることになります。

1994年、スターバックスによる「言葉」の買収
当時、全米へと急速に拡大していたスターバックスは、1994年に The Coffee Connection を買収します。
この買収の最大の目的の一つは、店舗網の拡大(特にボストンなど)以上に商標「フラペチーノ®」を手に入れることだったと言われています。買収後、スターバックスは自社のレシピでリニューアルした「フラペチーノ」を全米で展開。結果は、ご承知の通り大ヒット。瞬く間に「夏の定番」としての地位を築き、「スターバックス=フラペチーノ」という強力なブランド連想を確立します。
「言葉を制する者」が市場を制する
この事例の本質は、単に美味しい飲み物を得たということではありません。スターバックスは「フラペチーノ」という言葉を独占することで、フローズン飲料というカテゴリーそのものを支配した点にあります。
他社がどれほど優れたフローズンドリンクを開発しても、「フラペチーノ」という名前は使えません。それ以上に・・・・。
マクドナルドは「フラッペ」
タリーズは「スワークル」
ゴディバは「ショコリキサー」
などなど、各社、必死に独自のネーミングを浸透させようとしていますが、「フラペチーノ」が持つ圧倒的なインパクトと、顧客の脳内に根付いたブランド力にはなかなか届きません。スターバックスは市場拡大の足がかりとなる買収だけではなく、顧客にインパクトを与える「魔法の言葉」を市場から買い取ったことになります。
ブランドとは「顧客の頭の中」の陣取り合戦
スターバックスの戦略は、私たちに重要な示唆を与えてくれます。
商標権とは、ビジネスを開始するための準備手続きや、単に偽物を防ぐための守りの道具ではありません。「顧客の記憶に残り、指名買いを誘発する言葉」を自社の知的財産として押さえる、攻めの経営資源である、ということを教えてくれます。前回も言いましたが、ブランド力は、偶然の賜物ではないことが分かります。
「フラペチーノ®」という一つの言葉を買い取ることで、スターバックスは「夏という季節の主役」の座を不動のものとしたわけです!
皆さんのビジネスにおいて、顧客の頭の中に真っ先に浮かぶ「言葉」は何でしょうか? その言葉を権利として守り、育てていくことこそが、最強のブランド戦略になるのかもしれません。
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