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Ethical Hotline(内部通報制度)に関するQ&A

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Q1. ホットラインなどの内部通報制度を導入することは、法律で義務づけられているのですか?

A1.すべての組織に導入が法的に義務づけられているわけではありませんが、アメリカでは内部通報制度(ホットラインなど)は倫理的な行動の促進、コンプライアンス遵守、リスク管理の観点から非常に有効な手段とされており、多くの企業が自主的に導入しています。

一方で、公開会社においては、サーベンス・オクスリー法(Sarbanes-Oxley Act)やドッド・フランク法(Dodd-Frank Act)により、内部通報制度の設置が法的に義務づけられています。



Q2. 法的義務がない場合、ホットラインなどの内部通報制度を導入するメリットは何ですか?

A2.法的な義務がない場合でも、内部通報制度を導入することには次のような大きなメリットがあります。

  • 自浄作用を高める:従業員が不正や法律違反に気づいた際に、当局や原告側弁護士ではなく、まず自社に通報できる体制を整えることで、企業自身の手で問題を解決することができます。

  • 不正・法律問題の早期発見:匿名でアクセスできる信頼性の高いホットラインがあれば、問題が深刻化する前に早期発見・対処が可能になり、リスクの最小化につながります。

  • オープンな企業文化の促進:独立した通報窓口や匿名性により、従業員が安心して声を上げられる環境を整えることができます。これにより外部への告発リスクを減らす効果もあります。

  • 社会的評価の向上:しっかりと機能する内部通報制度があることは、従業員からの信頼だけでなく、取引先や社会からの評価にもつながります。また、法令遵守を超える取り組み(Beyond the law)として、万が一訴訟となった場合にも裁判官からの心証が良くなる可能性があります。



Q3. ホットラインの導入は、従業員に余計な力(権利主張)を与えることになりませんか?

A3.確かに、ホットラインなどの内部通報制度は、従業員の声を拾いやすくするため、従業員の“エンパワーメント(発言力の強化)”につながる側面があります。ただし、それは必ずしも会社にとってネガティブなことではありません。

従業員が自分の声が届くと感じることで、組織の一員としての自覚が深まり、会社の方針や規定に積極的に関与しようとします。これにより従業員はより主体的に行動するようになり、会社全体のパフォーマンスが向上することが期待できます。従業員が安心して意見を言える環境は、風通しの良い職場環境を形成し、より協力的な関係を築き、不正行為や不適切な行動を抑制する効果にも期待できます。

また、ホットラインのような通報窓口が存在することは、これまで言葉の問題や報復措置を懸念して声を上げられなかった従業員の意見・考えをキャッチする仕組みとなります。これにより、優秀な従業員の離職防止や、外部告発・訴訟リスクの回避にもつながります。



Q4. ホットラインを導入すると、通報やクレームが増えて会社の対応が大変になるのでは?

A4.たしかに、導入初期には通報数が一時的に増えることがありますが、これは“問題の可視化”という意味でポジティブに捉えるべき変化です。通報数の増加は、企業の透明性が高まり、従業員が外部ではなく自社に信頼を寄せている証拠とも言えます。これは、従業員が「会社やマネジメントのリーダーシップを信じているからこそ、声を届けていける」という強いメッセージと捉えるべきです。

また、自社の中での通報が増えるということは、不正や法律問題が社内に蓄積・蔓延すること、訴訟や外部告発に発展することを防いでくれている、という意味でもあります。

さらに、ホットラインに関する明確な規定やルールを設定することで、不適切な通報を制限し、中長期的には無秩序な通報の増加を防ぐことができます。



Q5. 通報後に従業員の不満が解消されなかった場合、かえって問題が大きくなるのでは?

A5.すべてのケースで、従業員が100%納得する解決を提供することは難しく、またアメリカにおいて訴訟を100%回避することも現実的ではありません。しかし重要なのは、“実効性のある内部通報制度”を整備・運用することです。

例えば、以下のような要素が欠けている制度は、実効性のない制度とされ、従業員に「声を上げても意味がない」と思わせてしまいます。

  • オープンな対話ができない

  • 通報後のフィードバックがない

  • 匿名性や秘密保持が徹底されていない

  • 事実調査が迅速に行われない

  • 是正措置・再発防止策が明示されない

  • 報復行為の禁止・防止体制が不十分

アメリカでビジネスを行う日本企業においては、ホットラインを設置する会社はまだ多くはありません。その場合、従業員が上司に直接報告するという属人的な“レポートライン”が、その会社の唯一の通報制度となってしまいます。上司の法律に関する知識、マネジメント経験値、性格に依存する内部制度のみでは、従業員の安心感や信頼は得ることは難しく、体制的には脆弱と言えます。属人的なレポートラインのみで、実効性のある通報制度を運用することは難しいでしょう。

また、「通報が少ない=不満や不正が存在しない」というわけではありません。通報件数が少ない企業ほど、今ある制度が形骸化しており、問題が水面下で蓄積されている可能性が高いと考えるべきです。



Q6. クレーマー気質の従業員への対応が面倒になるのでは?

A6.確かに、繰り返し通報を行う“クレーマー”従業員への対応は簡単ではありませんが、事実関係を整理し、冷静に対応する姿勢が重要です。

そのような従業員は、継続的な課題や満たされていないニーズ、悩みを抱えている場合も多く、会社が共感的な対応をすることによって、社内の会社への信頼感を高めることができます。また、よくある通報内容のパターンを分析することで、会社が抱えている問題の根本原因や潜在的なリスクを把握し、より効果的な対応策につなげることが可能です。

クレーマー従業員の応対については、ホットラインなど複数の窓口を設置した体制の方が、実務的にも心理的にも有効です。



Q7. 弁護士による社外Ethical Hotlineを設置する強みは何ですか?

A7.弁護士が運営する外部ホットラインを設置することには、以下のような明確なメリットがあります。

  1. 実効性のある内部通報制度の設計・運用が可能

  2. 内部通報制度の形骸化を防げる

  3. 通報に係る事実関係や法的論点を理解するスピードが高まる

  4. 通報内容の要点を理解し、社内調査を迅速に実行できる

  5. 匿名性・秘密保持が徹底され、従業員が安心して通報できる

  6. 報復行為の防止、そのための教育(研修)を実施できる

  7. 是正措置や再発防止策を有効に機能させる

  8. 倫理的な企業風土づくりや、従業員との対話力向上への助言ができる

  9. 訴訟社会アメリカにおける訴訟対応や証拠の整備が行える

  10. 弁護士の守秘義務と依頼者との秘匿特権による高い機密性が確保される



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内藤博久(Hirohisa Naito)MOSES SINGER ニューヨーク州・テキサス州弁護士 

The Chrysler Building, 405 Lexington AvenueNew York, New York 10174212.554.7670(直通)hnaito@mosessinger.com



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