【契約プレイブックのサンプル】準拠法(Governing Law)条項
- hnaito9
- 10月9日
- 読了時間: 4分

以下は、準拠法条項の契約プレイブックのサンプルです。
アメリカのカリフォルニア州を拠点とし、エンターテインメント(映画)ビジネスを展開する会社を想定してプレイブックを策定してみました。皆さんが、会社独自のプレイブックを作る際、こちらのサンプルを参考にしていただければ嬉しいです。
1. 条項と概要
条項例(英文)This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of the State of California, without regard to its conflict of laws principles. All disputes, controversies, or claims arising out of or in connection with this Agreement shall be subject to the exclusive jurisdiction of the state and federal courts located in Los Angeles County, California.
概要この条項は、契約の解釈や紛争解決にカリフォルニア州法を適用することを定めています。また、裁判所はカリフォルニア州ロサンゼルス郡に限定され、契約に関するあらゆる紛争はそこで解決されるよう設定してます。これは、当社の子会社がカリフォルニア州において設立され(エンターテインメント:映画)、ロサンゼルスを拠点とする米国の取引先、または米国(特にカリフォルニア)市場に進出・展開することを目指す外国企業と頻繁にビジネスを行うことを想定したものです。
2. 条項の機能と目的
法的確実性の確保: 米国でエンターテインメントビジネスに馴染みのない州、当社がビジネスを行っていない州、または国際取引においてアメリカ外の法律が予期せず適用されると、法律トラブルや紛争解決の困難さといったリスクが増大します。この条項により、契約の解釈が常に一貫した法体系(カリフォルニア州法)に基づいて行われることが保証されます。
効率的な紛争解決: 紛争が発生した場合でも、どの法律が適用されるか、どの裁判所で争うかが明確なため、手続きが迅速に進みます。これにより、不必要なコストや時間の浪費を防ぎます。
当社のリスク管理: 当社は米国のエンターテインメント業界と多くの取引があるため、取引相手が最も慣れ親しんでいるカリフォルニア州法を準拠法とすることで、交渉をスムーズに進め、取引のスピードアップを目指します。また、当社の米国子会社はカリフォルニア州を拠点としていて、ビジネスに関する重要な情報、資料、データなどもすべて当社のロサンゼルスオフィスに存在している。よって、紛争発生時のアクセスという面においても、この条項設定が好ましい。
3. 標準条項の設定
当社の標準条項は、常に「カリフォルニア州法」を準拠法とし、「カリフォルニア州ロサンゼルス郡の州裁判所および連邦裁判所」を管轄裁判所とします。これは、当社の法務チームが最も精通している法域であり、また米国のエンターテインメント業界における一般的な慣行でもあるためです。
4. 交渉戦略と譲歩の範囲
交渉戦略: 原則として、当社の標準条項を提示し、相手方にこの条項を受け入れるよう促します。相手が同じエンターテインメント会社、またはこの業界に精通していればカリフォルニア州を基礎とした標準条項を設定することは、まず問題ないでしょう。もし相手が準拠法を変更したいと提案してきた場合は、その理由を確認し、取引における重要性を判断します。
譲歩できる範囲: 相手が日本の企業である場合、「日本法」を準拠法とすることは問題ありません。ただし、その場合は紛争解決地も日本国内(例:東京地方裁判所)とすることをセットとします。また、相手が米国の大手企業で、準拠法としてニューヨーク州法やデラウェア州法を主張してきた場合、その企業との取引が戦略的に重要であれば、例外的に受け入れることを検討します。これらの州法は商取引の分野で確立されており、リスクが比較的低いと判断されるためです。
5. 絶対に譲れないライン
政治的に不安定な国の法律: 中国やロシア、特定の発展途上国など、政治や司法制度が不安定な国の法律は絶対に受け入れません。これらの法域では、公平な裁判が期待できず、当社のビジネスに大きなリスクをもたらすためです。
不合理な法域: 当社のビジネスに関連性がなく、法務チームも精通していない法域(例:アフリカの特定の国や中東の一部の国など)を準拠法とすることは拒否します。また、知的財産権の法律が、軽視されるような法域も回避します。
準拠法と紛争解決地が乖離する場合: 準拠法が日本法であるにもかかわらず、裁判管轄地が中国の裁判所であるなど、双方の法体系に精通していない裁判所が判断を下すことになると、非常に非効率的で予測不可能な結果を招くリスクがあります。このような不一致は避けることが最善です。
この記事に関する質問は、Moses Singer弁護士内藤博久hnaito@mosessinger.comまで、日本語でお気軽にお問い合わせください。なお、本記事は執筆時の情報に基づいており、現在とは異なる場合があることを、予めご了承ください。最新コンテンツやアップデート情報などをいち早くご希望される場合は、ニュースレターへの登録をお願いいたします。




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